A幼稚園

敷地面積

6517.09m2 (1971.42坪)

延床面積

968.44m2 (292.95坪)

施工

千葉建設 株式会社

この園舎は園庭を円形状に囲む配置をもち、建物を支える柱を斜めにすることで、どの位置からでも子供達を確認できる、死角の生じにくい内部空間と園庭となりました。

登園時には子供でも屋根の見える外観をもち、保育室内には子供でも天井が感じられる空間を設けることで、卒業後に自分の大きな成長を知ることができることを願って設計しました。
子供達の記憶に残る園舎になってほしいです。

― 初めての社会生活の場として記憶に残る建築 ―

長い庇によって円形に切り取られた空、教室ごとのシンボルツリー、低い天井により園児が実感できる保育室、園児でも屋根が分かる建物。

これらの生活の記憶により将来再訪した際に自身の成長を知る場にもなればと考えた。
通常「柱」がある場所には開口部を設ける事ができない。
しかしここでは開口部と柱が共存するかたちとし、子供の頭よりも細い柱サイズと円形の形状によりどこに居ても死角のない園舎を実現している。

各保育室前の開口部を開くとフローリングの廊下とデッキが一体となり中心に残ったV字柱は各保育室の生活の場のシンボルツリーとして見立て、この場で育まれる子供達の生活のイメージの象徴ともなる。
またこの柱形状により全面開口を実現している。
保育室の傾斜天井と髙天井は充分な自然採光と自然対流による換気を促す。
長い庇があっても暗くならず、屋外デッキの部分まで真夏の直射日光を遮ることが可能である。

現代主流でもあるプリント合板のフローリングなどの使い捨てられる素材を用いず、可能な限り自然な素材を用いました。
それは一昔前の民家の柱の傷のように、過ごした時間の記憶を留めておくためである。
使い込むことで味わいも増す。
これらの素材はおのずと化学物質過敏症対策にもなる。

構造材には一切集成材を用いず、流通寸法内の普及材を用いながらも架構によって保育室のみならず、エントランスや遊戯室の大きな空間も成立している。
同型の台形フレームを一ユニットとして同角度にて連続配列することで、同じ構造フレームの繰り返しで施工できるように配慮した。

近代建築 2019年10月号【特集 保育建築の計画と設計】に掲載されました